Dear Prince



3


これはどういう事だ?
何故彼がここに?

動揺した僕の声に人魚姫は気付かなかったようで、
慣れた仕草で彼の側に近寄り額に触れる。



「うん、今日もお熱はないですね。」

「…。」


さ わ る な


「じゃあ、…あの、軍師さん?」

「あ…はい。」


…今自分でも驚くほど嫉妬していた。
忘れようとしていた感情が彼を見ただけでこれほど強くよみがえるなんて。


人魚姫は僕の動揺に全く気付かない様子だ。

気付かないフリをしているのかもしれないが、
それを判断する材料も必要も今はない。


彼女は言葉を続けた。

「えっと…さっきも言いましたけどぉ。
王子様の寝てるシーツを変えたいんで…王子様をこっちのソファーに移してもらえませんか?」

「え…ああ、分かりました。」


…彼女に言われた事は…望むところ…だがまあそれは置いておこう。



その前に、聞きたい事があった。


「あの…この方はどうしてここに…?
それに何故意識を失っているんですか?」



それに、彼女たちは彼を「王子」と呼んでいる。
なのに帝国の王子であることは知らないようだ。



疑問はいくつもあるが…とにかく彼の状態だけでも知らないと。


人魚姫はおずおずと答え始めた。



「えっと…少し前に、海で溺れてたんです。」

「溺れて…?!」

「はっ…はいっ!それで私が助けて…。

それから、前からお友達だったハルヒ姫のところでお世話をしてるんです。」

「そう…なんですか…。」

「目を覚まさないのは、まだ身体が回復してないからだって鶴屋さんが言ってました…。」


彼女の言う鶴屋という人が誰なのか、今は聞きたいと思う余裕はない。


僕は彼の側に寄ると、眠ったままの彼をゆっくり抱き上げた。

ふわり、と腕の中に温もりを感じた。
彼の体温が確かにここにある。

(…生きてる…。)

安堵が心を満たした。



「…あの…?

ソファーはこちらですけど…。」


「あ、はい。

すみません。」


名残惜しく感じながら、彼を指定されたソファーに下ろした。


あの頃より少し大人びた、だけどまだ幼さの残る寝顔。
それを見てまた少し安心した。



(…調べるか…。)




自分の顔が軍師のそれに戻っているのを自覚できた。




                              To be Continued…




独占欲の強い古泉は基本ですねvv
こっちも再録のくせにのたのたしててすみません;



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